陰謀説を信じる人を強く煽る「恐怖の正体」がこれだ!

 私の周りにも「あの人までが」と思うほどコロナ・ワクチンに関する謀略説、陰謀論が深く蔓延っている。

 そして彼らは口をそろえて「ワクチン接種はしない」という。

 本人は感染しても「納得」だろうが、回りが迷惑をくする。

 コロナに感染した彼が感染源となって周囲を巻き込み、感染を広げたら、どう責任を取るのか? 死人は蘇らない。

 そのことを全く理解していない。

 彼らにぜひ読んでもらいたいのがこれだ。長文だが重要な記事なのでカットせず転載した。

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東洋経済「ワクチン陰謀説を信じる人を強く煽る恐怖の正体」

コロナワクチンをめぐる不穏な動きが一部で見受けられる。ワクチンが人口削減のため生物兵器だとする陰謀論や、ワクチンがヒトDNAを改変するといったデマの流布である。

パンデミックの初期にコロナによる健康被害や死亡率、あるいは治療や予防に関する誤った情報が拡散され、多くの人々の恐怖心を煽ったのとまったく同様に、今後の感染症対策全般において悪影響を与えかねない。

■ワクチンめぐる陰謀論やデマに深入りする人も

 ネット上では、「コロナワクチンを接種すると5GやBluetoothに接続される」という説がまことしやかに取り沙汰され、「コロナワクチンは秘密結社が世界支配と人類削減を進める手段だ」と固く信じている人もいる。

YouTubeやTikTokなどの動画コンテンツを目にしたことをきっかけに深入りするパターンが目立つ。インフルエンサーが誘導している例も多い。

 ある自民党の地方議員は、「ワクチンは殺人兵器」「打つと5年以内に死ぬ」などと主張。

自身のフェイスブックでそもそもコロナは「架空のもので、真犯人は『インフルエンザ』や、電子レンジに近い周波数の移動通信システム、携帯電話で使う電波の『5G』」だと断定している。

投稿には毎回数百のリアクションが付き、広範囲にシェアされている。

 すでに欧米では、パンデミックの初期の時点でこのような「コロナは存在しない」といった認識をコロナ否認主義(COVID-19 denialism)と呼び、ソーシャルメディアを介して感染症対策の弱体化を目論む情報戦の一種とみて、公衆衛生上の危機を助長する恐れがあるとして注意を促していた。

 コロナ否認主義の立場からすれば、「存在しないウイルスのためのワクチン」と捉えるしかないのだから、「何が入っているかわかったものではない」となる。

それゆえマイクロチップなどの埋め込みなどがありうると想像され、マイクロソフトの共同創業者のビル・ゲイツなどが黒幕とされてしまうのである。

 ここまで極端なものではないが、コロナワクチンに対する不信感を募らせるフェイクニュースも大量に出回っている。

 ワクチン接種によって不妊症になるというのがその1つだ。AFP通信は5月16日に、「不妊症を引き起こす恐れがあるとの偽情報がオンラインで拡散している」とし、「米国では接種をためらう人も出ており、専門家らはこうした恐怖をあおる主張は事実無根だと説いている」と報じた。

 フェイスブックで出回っている最もひどい偽情報の中には、「ワクチンを接種してない女性が接種済みの男性との性交渉により不妊症になる」「接種を受けた人の97%が不妊症になる」といったものまであった。

米国産科婦人科学会や米国生殖医学会などが共同声明で「ワクチンが生殖能力の喪失につながりうるとの証拠はない」と発表した。日本でもSNSを中心に話題になり、日本産科婦人科学会などが似たような文書を出している。

■接種と死亡例との根拠のない関連付けも

 加えて、ワクチン有害説へと傾倒しかねない接種と死亡例との根拠のない関連付けなども横行している。しかもこれはかなり意図的であるという。

 4月28日に欧州連合(EU)が公表した報告書によれば、今年の初めから、とりわけ西側諸国が開発したコロナワクチンを標的に、偽情報を流すキャンペーンが激化したとしている。

ロシアと中国のメディアが西側諸国のワクチンに対する不信感を植え付けることを狙って偽情報を流しているとの分析を示した(EEAS SPECIAL REPORT UPDATE: Short Assessment of Narratives and Disinformation Around the COVID-19 Pandemic (UPDATE DECEMBER 2020 - APRIL 2021) - EU vs DISINFORMATION)。

 重篤な副反応であるアナフィラキシーショックの事例を扇情的に取り上げ、血栓症などの「ワクチンの副作用の可能性を選択的に強調し、文脈情報や進行中の研究を無視」して報じているとしている。

要するに、自国のワクチン外交を有利にするための戦略だというのだ。

 以上を簡潔にまとめると、①陰謀論、②デマ、③誇張された情報があり、場合によってはこれらが複雑に絡み合っている。そして、少なくない人々がいわばネット情報が真実を語っていると思い込み、フェイクという霧に覆われた陰謀論の森へと分け入っていくのである。

 心理的な背景としては、過剰接続の時代において悲観的な情報を追い続ける「ドゥームスクローリング」の日常化と、すべてが自己責任へと転嫁される新自由主義的な価値規範が浸透したことによる「健康不安」の深刻化が挙げられるだろう。

 過剰接続の時代とは、スマホの普及と生活環境への定着に伴い、自らの気分や感情そのものを養分にした情報摂取の常態化を意味する。その傾向はコロナ禍で孤立や孤独感が強まることによってますます拍車が掛かっている。

■常に悲観的、逆に楽観的な情報ばかりを追う人も

 あらゆる薬や治療がそうであるように、ワクチンもリスクがゼロということはありえない。

しかし、稀な事例にフォーカスするのを止められなくなる。健康診断の結果、要精密検査となったり、軽い頭痛、または胃痛がしたりするなどといった異変をきっかけに、ネットを検索して「自分は重大な疾患にかかっているのではないだろうか」と思い詰めることは珍しくないことだが、これが公衆衛生政策のレベルにおける健康不安にまで拡張されたと考えればわかりやすいかもしれない。

 次から次へとコロナワクチンに関する悲観的な情報ばかりを漁り続けるドゥームスクローリングはその最たるものだが、他方で、逆に楽観的な情報ばかりを漁り続けるパターンもありうる。

去年の2月頃に出回った「ウイルスは耐熱性がなく26~27度のお湯をたくさん飲めば予防できる」というチェーンメールに代表される予防法に関するデマが度々蔓延したのがそれだ。

 先日、筆者の知り合いからコロナワクチンが生物兵器だと言って接種を拒否している70代の父親の話を聞いたが、以前はウイルスは乳酸菌で殺せるから毎日ヨーグルトを食べろと力説していたという。

これは恐らく偶然ではない。まさに本人のネガティブな気分や感情が磁力となって、それらの欲求を満たす情報の断片を吸い上げていくのである。

 もう1つの健康不安は、近年増大している健康志向と一体化したものだ。

 かつて社会学者のジグムント・バウマンは、安心感が得られる仕事や人間関係の寿命が個人の人生よりもはるかに短くなった時代状況に触れ、「明日会うのが確実なのは、自分自身の身体だけかもしれない」と評した(『リキッド・モダニティ 液状化する社会』森田典正訳、大月書店)。

 つまり、極めてセンシティブで気が滅入るような健康不安の深層には、孤立無援に感じられる寄る辺なさと社会的承認を失うことへの恐れがあるというのである。

現代の過酷な生存競争のジャングルにおいて、病者のカテゴリーに振り分けられていないこと、健康でいることが唯一頼りにできる身分証明書となっているからだ。

■不健康になることは個人の怠慢? 

 これは昨今健康であることの重要性が巨大化するヘルスケア産業だけでなく、国家ぐるみで盛んに取り扱われていることと無関係ではない。

自己責任論の流行に象徴される新自由主義的な規範の内実とは、健康に関していえば、「健康でいることは個人の義務だが、不健康になることは個人の怠慢だ」という暗黙のメッセージにある。

コロナに罹患して後遺症のために働けなくなった人々は、多かれ少なかれこのような理不尽に直面せざるをえなかった。

 これは賃金の低下や非正規労働の拡大などといった不安定な境遇への転落が本人のせいとされるのと同様、万が一ワクチンによる健康被害が発生した場合も泣き寝入りしなければならないのではないか、という疑念を抱かせるには十分といえる。

 例えば、mRNAワクチンがヒトDNAを改変するという不可逆的変化の恐怖を煽る偽情報を支えているリアリティとは、外部からもたらされる未知のリスクによって回復不能なダメージを被ることへの警戒心と恐れなのである。ここにおいてドゥームスクローリングは、健康被害の実態を追求する方向で作用するかもしれない。

陰謀論を信じていなくともワクチン忌避を補強する心性が育まれてしまっている面もあるのだ。

 昨年10月にイギリス誌『Nature Medicine』に掲載された国際調査で、国民のワクチン接種の許容度が政府への信頼度と相関するという結果が明らかになったが、このことが日本でも悪い形で表れることが懸念されるといえるかもしれない。

 情報発信の仕方を含めたワクチンに関する適切なリスクコミュニケーションはもちろん不可欠ではあるが、中長期的にはここ10年、20年でさらに加速したリスクの個人化、何らかのトラブルや不手際によって突然社会的な地位が奪われ、いとも簡単に見捨てられてしまうことへの不安にこそ目を向けなければならないのではないか。

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